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突き抜けるような青空に、ふわりふわりと漂う真っ白な雲。

徐々に小さくなっていく飛行機は、あっという間に雲の中へ消えてゆく。


窓ガラス越しにそれを見上げ
目を細めると、あたしはボストンバックを持ち立ち上がった。



そして、腕時計に目を向けると

「織葉さーんっ!」

よく通る声があたしを引き止めた。



胸元まで伸びた髪を押さえ、振り返る。



「おきちゃん、来てくれたの?」

駆け寄って来る彼女にそう声を投げると、おきちゃんは乱れる息をそのままに声のトーンを上げ喋り出した。



「当たり前じゃないですかー!だってあたし、お土産頼んでなかったですもん!」

「もぉ。そんな事ばっかり言って!」

「あはは、冗談ですってば!」

ケラケラと笑うおきちゃんに、あたしもつられて笑ってしまった。


ひとしきり笑うと、おきちゃんはガラス越しに見える空を見上げて言う。



「いいお天気ですね。」

梅雨じゃないみたい、と
口にする彼女にあたしも「そうだね。」と視線を上げた。


「去年はどしゃ振りでしたもんね。」

「…うん。」


切なく胸を過ぎる、あの日。



すると、おきちゃんは空に向けていた顔をあたしへと移し

「ハワイも、七夕はいいお天気みたいですよ?」

言いながら、ニッコリと笑った。