PM13:00 2



「台詞がな……覚えられなくて苛々してたんだ」

顔をひくつかせてそう言った七澤は、片腕を離さないまま、もう片方の手で床に投げ出された台本を取って。


私の膝にそれをのせて、綺麗な長い指でぱらぱらとめくり始めた。
ちらちらと目に入るのは、御伽噺の世界の中だけで生きる、甘い言葉たち。

これを王子の姿をした七澤が言っているところを想像して胸が痒くなり、王子も大変だなあ、と改めて思った。



まあ、でも。
今は、それよりも。



「七澤」
「……何だ」
「腕を、解いてくれ」
「嫌だ」


…いや。

そこ、即答するところか。


「もう少しだけ…」


そう、耳元で聞こえた七澤の声は、余りにも切なげで。



私はもう、何も言えなくなってしまった。