「演劇やってらっしゃるんですか?」

演劇に興味が無い人間にとっては、知りようがないその場所を知ってる俺に女が尋ねてくる。

「昔ね」

「そうなんですか。それだったら是非観に来て下さい。絶対に面白いですから」

勢い込んで女がそう言ってくる。

「……ああ」

何の当てもない俺は、其れを観に行くことにした。

何故そんな気になったのかは自分自身でも分からないが、俺はその場所に向かうべく、地下鉄の駅へと歩きだした。