ミチをさらって逃げてしまおうか


なんどそう、思っただろう。





「ヒロ様ー!」


なんでこう、休み時間のたびに逃げ回らなあかんわけ?


俺が嫌がってるとか、そんな空気は呼んでくれへんの?


「ヒロ、こっち」


急にシンゴが現れて、手招きする。


そこに行き、追いかけてくる子たちが通り過ぎるのを待つ。



「お互い大変やなぁ」


シンゴはふぅと息をついてその場に座り込む。


「もう、俺のことは放っといてほしい……」


俺が言うと、シンゴは同感、と呟いた。



「そういえば」


シンゴがニヤリと笑った。


「さっき、ミチちゃん見たよ。」


その名前に思わずビクリとして、シンゴを睨む。


「それが何。」


「強がっちゃって~。俺知ってるよ?ヒロがミチちゃん好きやって」


ニヤニヤが止まらない様子のシンゴに対して

俺はイライラが溜まる。


「なんで。」


「だって~ヒロくん最近遊んでないし?変態なヒロくんがヤッてないとは考えられへんのに。」


「………」


「だから、その相手にはマジなんやろうなぁって。俺にも言えへん相手ってミチちゃんしかおらんやん」


シンゴの鋭すぎる読みに、俺は言葉を失った。



*