「……なぁ、ミチ」


「んー?」


「………」


「兄ちゃん?」


兄ちゃんはまっすぐ前を見て


しばらく口を開かなかった。



「俺なぁ、ミチのことで悩んだ時いつもここに来てた」


「兄ちゃん……」


「俺にとってはここが一番の思い出の場所や」


兄ちゃんはそう言って、フッと笑った。


その顔は、今まで見た中で一番


魅力的だった。



「俺を好きになってくれて、ありがとう」


「うんっ……兄ちゃんも!」


「あぁ」


そして引き寄せられるように


キスをした。


「なぁ」


「ん?」


「そういえば、学校でヤッたことなかったやんな?」


……え?


えぇぇぇ?


兄ちゃんは、ビックリするほど意地悪に笑ってあたしににじりよってくる。



「制服でできんの、最後やしな」


「……っ」



……結局、あたしたちは何も変わらんくて。


これから変わるのは、兄ちゃんが制服を着なくなることと


あたしが兄ちゃんを、「ヒロ」と呼ぶようになることだけ。


兄ちゃんは相変わらず変態なくせに、あたしにはめっちゃ優しい。


兄ちゃんはいつまでも変わらずあたしを愛してくれて


あたしは自由な兄ちゃんに振り回されながらもそれが楽しくて。


変わらないことが、幸せ。



「あー、外ってめっちゃ興奮する」


「へ、変態っ!」


「変態で何が悪い」


「……っ」


きっとあたしと兄ちゃんは、これからもこのまま。


ずっと、このまま。




[END]