「兄ちゃん、帰ろー」


あれからしばらくして。


兄ちゃんは退院して、普通に学校に来ている。


松葉杖は、まだ取れてないけど。


兄ちゃんの教室に迎えに来ると、兄ちゃんは帰る準備をして立ち上がる。


「おう、おまたせ。」


ようやく慣れてきたのか、松葉杖の使い方もうまくなってきた。


「あー、めんどくさいなぁ。松葉杖。」


「うん。でもあとちょっとの辛抱やし。頑張ろ?」


「……ミチを抱けへんのがすっげぇ辛い」


「……っ」


そ、そんな子犬みたいな顔で見られても、あたしにはどうにもできんし!


「治ったら、一週間は離さんからな」


ひぃ!兄ちゃんならほんまにやりそうやから怖い……。


ゆっくり歩いて、玄関を出る。


……ん?


校門のところに、めんどくさいのが見えるのはあたしだけ?


「に、兄ちゃん。」


「あぁ…」


兄ちゃんにも見えてるみたいで。


同時に、深い深いため息をついた。


「ヒーロくーん!」


この、ムカつくほどねっとりした声。


……まさか、あのエロナースが学校にまで現れるなんて。


「なに?」


兄ちゃんが不機嫌に言うと、エロナース、もといマユミは腰をクネクネさせる。


「なにってー、ヒロくん、知らないうちに退院しちゃうんやもんっ」


……そりゃぁ、無理言ってマユミが休みの日にしてもらったもんな。


*