そして、名門校となりつつある野球部の

長く厳しい毎日の練習が本格的に始まった

部員がつらくなると反比例のように私の仕事は楽になる

私の仕事はノックの玉渡しや部員たちの飲み物を作ったりするだけになるからだ

これらも結構、重労働だが部員に比べたら

いや、比べたら失礼なほどだ

しかも、朝、起こしに回るよりも楽だと私自身も思う

「奈緒ー…水ー…」

投げ込みを終えた樹が私にそういうと座り込んだ

それから、ぞろぞろと他の部員も私の方にやってきた

口々に水、水と力無く叫んで倒れ込んだ

やっと朝練が終わったのだ

これから普通の高校生として授業を受けなければならないのに

みんなその力を一切残していない

野球部のほとんどが授業は午後練のための休み時間だと勘違いをしている