そして、どれくらいの時間が経った分からないが、木場先生はゆっくりと口を開いた。
「瑠璃ちゃんは、これからどんどん記憶をなくしていくと思います。」
「どんどん、ですか?」
「はい。瑠璃ちゃんがあとどれくらい生きられるかは分かりませんが、小西先生が思ってる以上に早く、たくさんの記憶が消えていくでしょう。」
「そんな…」
嘘だろ?
瑠璃の記憶がどんどん消えていく?
それも急速に?
「小西先生、落ち着いて下さい。」
「…そんなに、慌ててますか?」
「慌ててるというより、震えてます。」
オレは自分の体を見るように下を向いた。
足がガタガタと震えていた。
瑠璃…
瑠璃は忘れてしまうのか?
オレのことも忘れてしまうのかもしれないのか?



