尾崎先輩の言ってる事は分かる。


オレが院長と話した時に思った事、


治せばこの世のものとは思えない名誉、死なせれば…


尾崎先輩はオレの事心配してくれてるんだ。


医者として、後輩として、仲間として。


尾崎先輩の気持ちは痛い程分かる。


オレが尾崎先輩の立場ならオレだってそうする。


だが…


「ありがとうございます。でもオレ手術やります。」


「純、確かにお前は最高の外科医だ。もうオレはお前に抜かれちまったし、オレはお前以上の医者はいないと思う。」


「そんな、オレはそんなんじゃ、」


「否そうだ。だがな、お前にはまだ無理だ。経験が少なすぎる。」


「…」


「それに、もう何ヶ月メスを握っていない?」


「…」


尾崎先輩が言ってる事は正しかった。


瑠璃と同じ病気を治したという医者は、アメリカでメスを30年間握り続けた天才外科医。


それに比べてオレは…もはや比べ物にならない。