家の前の通りまで出ると―…
「美衣〜っ!」
あたしを呼ぶ声がして、ハッと顔を上げると…。
その声の主は、白い車の横に立ち、満面な笑みを浮かべながら、こちらに向かってひらひらっと大きな手を振って見せている…。
「…ゆ…優っ!」
あたしは思わずキョロキョロっと左右を見渡すと、周りに人がいないことを確認して、慌てて優の元へと駆け寄った。
優ってばっ…!
どうして…!?
ただえさえ、存在そのものが目立つっていうのに。
今日の優は、変装らしいことを何ひとつしていなかったのだ…。
それなのに、人通りも少ない早朝とはいえ、あんなところに立っていたら…
誰かに気付かれちゃうじゃないっ!
あたしは慌てて優の元へと駆け寄った。
「…ちょっと、優っ!
どうして車から降りてたの!?こんなとこにいたら見つかっちゃうよ!」
あたしは優の腕を掴み、運転席に乗るように背中を押した。
「…え?なんで?…だめ??」
顔だけあたしの方に振り向くと、その表情はキョトンとしている。
だめ?…って…。
優は芸能人なんだし
ただえさえ今は…
「いいじゃんべつに。
美衣との交際宣言もしたことだし…。
今更バレて困ることなんて、もうないけど?」
そう言って、ニカッと白い歯を見せて笑う優。
「―………!!」
その笑顔を向けられると、あたしはいつだって胸を踊らせてしまうんだから…。
「まっ、外寒いし、さっさと車乗るか」
そう言って、優は助手席のドアを開けてくれた。
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