「…だけど、
優はあなたと真剣に付き合っているようだし…。
別れてほしいとは言わないよ…。」
―……え?
それは予想外の言葉で。
驚いたあたしは、藤堂社長の顔を見上げた。
だってあたしはてっきり…
"別れてほしい"
そう言われるとばかり、思っていたから…。
『よかった…』
そう安堵したのもつかの間…。
「しかし…、
白崎聖花とのこともあるし、尚更、あなたと優のことがマスコミにすっぱ抜かれてしまうと困るんだ…。
だから今まで以上に、この秘密がバレることのないよう、十分に気をつけて行動してもらいたい。
約束してもらえるね?」
「…はい」
「…わかってます」
あたしと優は、社長と固い約束を交わした。
「それなら、話はそれだけだ。
立花さんでしたっけ?
わざわざこんなところまで来ていただいて、すみませんでしたね。」
「…い、いえ…」
「でもお会いできてよかった。
もしあなたと直接会ってなければ、頭ごなしに『別れろ』と、そう言ってしまうところだった。」
「…え…?」
それって…
「…それじゃ私は次の仕事があるので、このへんで失礼するよ。」
そう言って、藤堂社長は席を立った。
社長は
あたしたちのことを
認めてくれた――…
そういうことだよね…!?
「あのっ…!!」
あたしは咄嗟に、大きな声で社長を呼び止めていた…。
その声に社長が振り向き、あたしを見ている。
「ありがとうございますっ!!」
あたしは社長に向かって、深々と頭を下げた。
そんなあたしに
一瞬だけ微笑んでくれると。
「今度は食事でもしながら、ゆっくりお話しましょう。それでは」
そう言って、あたしたちの前から立ち去って行った。
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