「……擦んな。痛ぇだろ」 「ケンカせえへんから泣かんといてー」 右手は藤岡くん。 左手は篁くん。 空いた手ではふたりしてあたしの涙をぬぐってくれる。 険悪な空気がなくなってるのがわかって、今度は嬉しくて泣いた。 そして最終的には大泣きになるあたしを見て、篁くんが笑う。 「ハハッ……な、斎」 「……何」 「あん時……なんか言いかけてたやろ。 なんやったん? いまさらやけどな」 その、顔とは反して真剣な声に、藤岡くんが少し目を見開いた気がした。