「笑顔がとってもぎこちない。言いたくないなら言わなくていいけど、無理しないでね?」


 仕方なく愛想笑いを返す。あまり詮索しないで、という意思表示でもあり、心配してくれる友人に負担をかけない為の精一杯の虚勢でもあり。そういう気遣いをするのがまた重荷になるかもしれない、とまで考えるとキリがないのでストップ。


「ははは、どうにもならなくなったら相談するかも」


「どうにもならないなら私の出る幕ないよ」


 ごもっとも。


「そうだ、今夜予定あいてる?」


 教室棟の方を指差しつつ、問いかけられた。歩きながら話そうということだろう。腕時計を見ればあと五分で講義の始まる時間だった。

 単車の後輪にチェーンロックをかけ、理有と並んで教室棟へと向かう。