『俺、何か変なこと言いました?』 永瀬さんは怪訝な顔して私を見た。 「救命救急は、意識が回復すれば一般病棟に移ってしまうから、あなたみたいな患者はそうなかなかいないわね。 だから、私のことを覚えている患者はひとりもいないと思うわ。 でも、ひとりでも多くの人が助かってくれればいい…私にとってそれが、救命でのやりがいだから」 永瀬さんは、私をじっと見つめて、 『俺、あなたの声…聞こえましたよ。』 そう言うと、私の手を両手で包み込むように握った。