『勇輝さ…』
優季はオーブンの中に視線を置いたまま、話し始めた。
『あなたを初めて見た時、冷たい目をして、尖ってて…まるで、ナイフのような人だなって思った。
何だかとても危険な感じがして、患者としては、頑張って向き合うことはできても、プライベートでは絶対無理だと思った。
でも、あなたが隣に来てわかったの。
ひとりで生きていくには、そうならざるを得なかったんじゃないかって、
私の勝手な思い込みかもしれないけれどね。』
オーブンの中の膨んだケーキ生地が、焼き色を帯び、甘い香りを放っていた。
まるでそれは、焼き上がりが近いことを教えてくれるように。


