優季の顔が曇った。
『もうすぐ安定期の妊娠5ヶ月に入る寸前に、出産直後の患者が心停止になって、
この日は分娩ラッシュで、どの先生も看護師も手がいっぱいで、他科の先生に応援要請したんだけれど、来る様子がなくて…ッ!』
言葉に詰まる優季に、
「優季、もういい…」
でも、優季は首を振って、
『最後まで話さなきゃ、意味がない』
そう言うと、膝の上で組まれた両手を見ながら、再び淡々と話し出した。
『誰も来ないなら、自分が助けなければ赤ちゃんのお母さんが死んでしまう、母親を知らない子供になってしまう…
そう思ったら、無我夢中で心臓マッサージをしていた。
もう誰かが死ぬのは嫌だったから、私が助けなきゃいけないと思ったから』