優季は胸ぐらを掴んでいた手を離すと、


『私が泣きます…』

その言葉に、

「ふざけるな!」

そう言い返そうと彼女に鋭い視線を浴びせると、

『私、永瀬さんが助かって本当に良かったと思っています。

もし、あなたが手術を拒否したまま亡くなっていたら、私は何故あの時、強引にでも手術を受けさせなかったんだろうと、一生後悔していました。

誰ひとり泣かなくても、私はあなたのために涙を流したと思います』


彼女の魂のこもった言葉に全身の力が抜けた。


俺の中に張り巡らしていた壁が取り払われて、爽やかな風が通り抜けていくように心が軽くなった。


今までの自分があまりにも情けなくて、優季の手を離すと、


「すまない…」

そう詫びることしかできなかった。