歩くこと数分、
ここは病院の近くにある小さな公園
公園の真ん中にある大きな桜の木がここぞとばかりに1年の中で一番美しい自分の姿を見せつける。
「知らなかった。ここにこんなに立派な桜の木があったなんて…」
先生が穴場と言うだけあって満開だというのに、人の姿は見られず、何だか公園を貸し切っているみたいで、贅沢な気分だった。
桜の花は柔らかな月の光と小さな外灯に照らされて、限りある美しい時間を懸命に咲いている。
力尽きて風に舞うその瞬間まで…
ギュッ!
先生が私の手を強く握った。
私は驚いて先生を見ると、
『桜に見とれていて、俺のこと…忘れてない?』
そう言うと、柔らかな笑みを浮かべた。


