「蕾がだいぶ膨らんできましたよ。
来週には満開になりそうですね」
そう言い、桜の木を見上げた。
『そうだな…でも来週から出張だから、帰って来る頃には散ってるだろうな』
先生は残念そうに言った。
「任せてください。写メ送りますから!!!」
失恋してもあなたのことは嫌いになれません。
「あの…先生、私に話って何でしょうか?」
先生が歩くのを止め、夜空を見上げた。
先生が今、何を思い、何を考えているのか、私にはわからなかった。
『野島…』
先生が真剣な眼差しを私に向ける。
いつもの先生とは違う。
今、私の目の前にいる田上真人は私がよく知っている田上先生ではなく、28歳のひとりの男性だった。


