そういえば、あいつの部屋に入るの…初めてだ。
♪〜
かすかだけど、中からピアノの音が聞こえてくる。
CDでも聴いてるのかな?
そーっと奥に足を進めていくと、
ヘッドホンをつけた勇輝がキーボードを弾いていた。
これでは、いくらインターホンを鳴らしてもドアを強く叩いても聞こえないはずだ。
でも、CDと聴き間違えるくらいに見事な腕前、
プロのピアニストみたい。
勇輝が奏でる音色はどことなく悲しげで、それでいて優しい。
私の胸の奥深くに沈めた大切なものを甦らせる。
真人…
私は流れる涙を拭うのを忘れるくらいにあいつの演奏に引き込まれていった。


