あつしが居なくなってしまった日から約1ヶ月後

私は、あつしの家に居た

あつしのお父さんとお母さんに呼ばれたのだ

「お線香をあげてやってくれないかい?」


お父さんが優しい口調で言った


私はお線香をあげて手を合わせた


「今日は渡したい物があって来てもらったの。あの時は睨んだりしてごめんなさい」


お母さんが言ってくれた言葉に私は驚いた

あの時の鋭い目が嘘のように優しい目

あつしと同じ優しい目だった

「私ね、あなたの事を少し恨んでたの。悪いのはあなたじゃないと分かっていても…トラックを居眠り運転してた運転手が悪いって分かってても…それでもあなたを恨んだ」

私は何も言えなかった

お母さんは話を続けた

「病院の先生に聞いたんだけど、あつしが最後に呼んだ名前は私でも、お父さんでも、もちろんさやかちゃんでもなかったそうなの」

「えっ…じゃぁ…」

「そう。あなたの名前だったそうよ。そんな話を聞いたらあなたの事恨んだりできないと思った。あつしが愛した人なら私も大切にしたいと思ったの。だからあの日あなたを睨んでしまった私を許してくれないかしら?」
「はい!」

「よかった」