するとそんな二人に30台前後の男女が声をかけてきた。


ねぇ、あなた。もしかして月山さん?」




 どういうわけか、桜の苗字を知っている。



 昨日のことを思い出し、稔が用心深く答える。




「その前に、あんた達は?人に名前を聞くときは、まず自分から名乗りましょうって、幼稚園の先生に教わらなかったんですか?」




稔の存在に驚く様子もなく、女の人が続けて話す。





「なるほど。さっそく騎士のお出ましってわけね。あぁ、私は東饗子(ひがしきょうこ)よ。こっちは、矢野政義(やのまさよし)。ごめんなさいね。これでいいでしょ?…あなた、月山桜さんね?」