陸は、有名だ。


まだ、2年生なのに、強豪・東高校のエースとか言われちゃって。


新聞でも大きく取り上げられる人間の一人だ。


「陸って、何だっけ。ピッチャー?」


「守備はピッチャー」


でも、実際ピッチャーってのは何をする人なのかよく分からない。


だけど、2年生でピッチャーをする事ってきっとすごい事なんだと思う。


去年の夏の甲子園は予選で敗退しちゃったけど、今年は甲子園出場間違いなしと騒がれている。


本当に、彼はあたしやなっちゃんとは違って、表の世界の人なんだなってつくづく感じた。



「俺、お前来たら勝てそうな気がする」


いつも照れるくせに、こういう言葉は自らサラッというもんだから、彼って本当わからない。


「…弥生さんなんて、諦めろよ」


時が止まったかのように思えた。


陸の言葉があまりにも衝撃的すぎるもんだから。



「なんでよっ」

反射的に陸をみて、思わず睨む。


「弥生さんみたいなイケメンが、央を選ぶってありえねぇよ。お前、シンデレラじゃないんだから」


そんなの、わかってるよ!


悔しい。

反論する言葉なんて、どこを探しても見つかるはずが無い。


だって。

なっちゃんは、今、遠くにいるんだから…。


でも。


「何で、陸ってなっちゃんの事知ってんの?」