SIN (LOVE and DAYS・番外編②)

「俺……自分がこんなに、感情的な人間だなんて思わなかったんだ。

どんなときでも笑って過ごす自信があったのにさ。
千夜子さんに出会ってから、ペース乱されっぱなしなんだもん。

ホント、まいっちゃうよな……」




流れそうになる鼻水を何度もすする。

鼻の奥がツンとして、声が震える。




「こんな想いすんのなんか、絶対にゴメンだって思ってたのに……。

正直、今、むちゃくちゃ胸が痛ぇよ。

ひとりの女のために必死になって、マジくだらねぇ。

ダサいし、しんどいし、嫌んなることだらけだし。


……でもさ」




でも……


こんな自分になれたことが
少しだけ

ほんの少しだけ、誇らしくもあるんだ。



傷つかないための安全な場所から、俺を連れ出してくれたのは、千夜子さんだったから。





「だから……ありがとう」





鼻水は止まる気配がなかった。

頬には涙が流れていた。


ありがとうをサヨナラの代わりにして、俺は窓から視線をはずす。


その視線の先に、千夜子さんが立っていた。