恋なんか面倒で、やっかいなだけだと思ってた。
誰かを好きになって
時に傷ついて。
どんどん自分らしくなくなって。
それでも恋をやめないみんなを、俺はずっと理解できなかったんだ。
だけど……いつからかな。
好きな女のために変わった健吾を、うらやましく思うようになっていた。
好きな男のために、がむしゃらになれる莉子ちゃんを、素敵だと思うようになっていた。
ミツルと真由ちゃんの純粋な恋を応援したくなった。
そして、見返りを求めずひたむきに想い続けるアキを
今は理解できる気がするんだ。
幸せになるために、人を愛するわけじゃない。
愛さずにいられないから愛するわけで。
この気持ちの先に、何があるかなんてわかんないけれど
今は、千夜子さんしか見えない。
それが真実だから。
俺は出来上がった料理をタッパーに入れて、家を飛び出した。