SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


「ま、仕方ないんじゃね?」


アキの顔が、ふいにこちらを向いた。



「両想いだけが恋愛じゃねーし。
お前がその子のことを本気で想ってんなら、それも立派な恋だろ」



「……」



俺が、千夜子さんを想っているのなら……?




「――さて、と」


アキは首をぽきっと鳴らし、立ち上がる。


「帰るわ。起こして悪かったな」


「あっ、おい、アキっ!」



俺はハッとして、部屋を出ようとする背中を呼びとめた。


アキが涼しい顔でふり返る。

さっきの俺のひどい発言なんか、きれいに忘れたような表情だ。


俺は急に恥ずかしさと気まずさがこみあげて、わざと乱暴な口調で言った。



「お、お前なぁ、ずるいぞっ! まだ話は終わってねぇんだからな!
お前、ホントは莉子ちゃんが――」


「さぁ? 何のことだかわかんねぇ」



アキはとぼけた様子で首をかしげ、小さく笑った。


それは秘密を共有する者同士の間で見せる、ちょっとイタズラっぽい微笑み。



「じゃーな、酔っぱらい」



それだけ言い残して、アキは部屋を出て行った。