「最っ低!」
左頬がジィンとしびれている。
えっと……突然のことで頭パニックだけど。
どうやら俺、ビンタされたっぽい。
「あたしが水商売だからって、軽い女だと思ってんでしょ!?」
「はぁ?」
いやいや、そこまで言ってねぇじゃん。てか俺、あんたの仕事とか知らねぇじゃん。
ちょっと冗談言っただけで殴るとか、何なんだよ一体!?
頬をさすりながら唖然とする俺に、彼女はまだ腹の虫がおさまらないらしい。
「だいたいねぇ、なんで高校生がホテル街を歩いてんのよ!」
「そっちだって、俺とたいして年齢ちがわねぇじゃん」
「は!? あたしは26歳よ!」
ええぇぇ~~!?
ありえねぇ。
サギだろ、サギ。
外見はどう見てもコドモだし
何よりこの、感情のまま暴走する性格。
とても26とは思えないですけど?
「……とにかく」
彼女は俺をキッとにらみつけ、急に大人ぶった口調になった。
「助けてくれたのは感謝します。ありがとう。じゃあね」
捨てゼリフのように言うと、彼女はヒールを鳴らし、颯爽と歩き出した。



