アキは何も答えない。
テレビに視線を向けたまま、かすかに肩をすくめるだけで。
タバコを乱暴に灰皿におしつける俺。
言葉が勝手に飛び出すのを、止められなかった。
「なぁ、いいかげん気づけよ。他の男に惚れてる女なんて、想うだけムダなんだよ。意味ねぇんだよ。さっさと忘れて次にいけばいいじゃん」
俺はアキの肩をつかんだ。
何か答えてほしかった。
「女なんか……」
声が、かすれる。
「女なんか他にいくらでもいるのに。なんであの子じゃなきゃダメなんだよ。
報われないのに想い続けたところで、辛いだけじゃねぇか。
なのに、なんで……」
わかっていた。
問いかけはアキにではなく、最初から自分自身に向けられていたということ。
……なんで俺は、千夜子さんじゃなきゃダメなんだろう。
答えがあるのなら、誰か教えてほしい。
俺にはもう、この消えない想いを、どうすればいいのかわからない。



