……もしかして
アキは、最近の俺がおかしいことに気づいて、様子を見に来たんだろうか。
ふと浮かんだ推測に、俺はくわえていたタバコを前歯で噛みしめる。
静かにテレビを見ているアキは、一見、普段と何も変わらない。
だけどこいつのことだから、何もかもお見通しなのかもしれない。
そう思ったとたん、タバコの煙より濃いモヤモヤが、胸のあたりを覆った。
俺は自分でも驚くほど意地悪な気持ちで、アキの横顔を盗み見た。
……人のことばっかり心配してる場合かよ。
本当は、お前だって惨めなくせに。
莉子ちゃんが好きなくせに。
幸せそうな健吾と莉子ちゃんを、そばで見るのも辛いくせに。
なのにお前は、いつも涼しい顔をして。
みんなに本心を隠して。
「……なあ、アキ」
お前はそれで、本当にいいのかよ。
「もうあきらめれば?」
煙といっしょに、俺はそんな言葉を吐きだした。



