SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


時計を確認すると、まだ夜の8時だった。

思ったより長くは眠っていなかったらしい。



「アキ、ひとりか?」


「あぁ」


ビールの空き缶をゴミ箱に投げ入れながら、アキが答えた。



「近くまで来たから、ついでに寄ってみたんだ」



“ついで”と言うやつに限って、本当は“ついで”なんかじゃない場合が多い。


何の用だろう、と考えていると、ふいにこちらを見下ろしたアキと目が合った。



「酒くせーよ、お前」



やわらかく微笑むアキの茶色い瞳。


なぜかそこに同情が混じっているような気がして、俺はとっさに笑顔を作った。



「うるせー。女の子と飲んでたら楽しくて、つい飲みすぎたんだよ」



おどけた声が、妙に白々しく響く。


アキは「そうか」と穏やかに言うと、壁にもたれて座った。


会話のなくなった部屋で、俺はタバコに火をつけた。