尻尾を巻いて走り去るオッサンを見ながら、悦に入っていると
「あ、あの、ありがとう、ござい、ました」
ぎこちないお礼の言葉が、腕の中から聞こえてきた。
「いえいえ。大丈夫だった?」
「はい……」
まだ少し不安気な顔で俺を見上げる彼女。
近くで見たらけっこう可愛い子だ。
色白の肌に、小動物みたいなクリっとした瞳。
俺と同い年くらいかな?
「あの……」
「ん?」
「そろそろ、離してほしいんですけど……」
彼女は遠慮がちにそう言って、肩に回したままの俺の腕から逃げようとする。
顔はトマトみたいに真っ赤っ赤。
その反応が新鮮で。
なんだか、からかいたくなって。
つい、いつもの調子で言っちまったんだ。
「どうせだからこのまま、俺とホテル入っちゃう?」
バチン!!
と豪快な音が、耳のすぐそばで響いた。



