暴走していることは自分でもわかっていた。
今まで俺は、恋愛に溺れて自分を見失っているヤツらを、どこか見下していたのに。
でも今は、俺自身がもう、この昂りを抑える方法が見つからなかった。
「あの……あたし、ちょっとお手洗い行ってくる…っ」
逃げるようにベッドから降りる千夜子さん。
が、熱のせいで足にうまく力が入らず、体が大きくぐらついた。
俺はとっさに腕を伸ばし、千夜子さんを受けとめた。
「……っ」
ごめん、と小さな悲鳴のような声で言って、千夜子さんが離れようとする。
俺は両腕に力をこめて、さらに彼女の体を抱き寄せた。
折れそうなほど華奢な肩。
胸元にかかる熱い息。
こんなにきつく抱きしめたら、きっと千夜子さんが苦しいだろう。
そう思うのに、俺は腕をゆるめることができなかった。
本当に好きな女を、どのくらいの力で抱きしめればいいのか
俺にはわからなかったんだ。



