「千夜子さん……?」
「………」
「なんで泣くの?」
返事はない。
両手で顔を覆い、しゃくりあげるだけ。
「なぁ、そんなに辛いなら仕事やめればいいじゃん。
千夜子さんにはきっと他の仕事の方が向いてるよ」
痺れを切らしたように俺は言った。
話の流れで言ったように見せかけて、本当はずっと前から思っていたことだった。
以前、どうして夜の仕事をしているのか、千夜子さんにたずねたことがある。
そのときの彼女の答えはこうだった。
「最初は友達に誘われて、なんとなくだったの」
“なんとなく”
だったら、無理してまで続ける必要はないと思う。
千夜子さんに夜の世界は向いていないと思う。
いや、それ以上に
それ以上に……
俺が嫌だから、やめてほしいんだ。



