「メシは?」
食べてない、という意思表示で、首をかすかに横にふる千夜子さん。
「俺、何か買ってくるよ」
そう言って出て行こうとした俺を止めたのは、ベッドから伸びた千夜子さんの手だった。
服のすそをつかむ、小さな手。
俺は向き直り、彼女の顔を上からのぞきこんだ。
「千夜子さん……?」
言葉もなく、彼女の瞳から涙がぽろぽろこぼれていく。
「どうしたんだよ」
俺はベッドの横にしゃがんで、濡れた頬を指でぬぐった。
肌よりも熱い涙が、俺の親指の上でにじんだ。
「……何かあった?」
誰だって体調を崩したときは気弱になるもんだ。
だけどそれだけの理由で、千夜子さんが俺に対してこんなことをするとは考えられなかった。
「何か辛いことがあったんだろ?」



