すぐにドアノブを引きたい衝動を抑えて、あちらから開かれるのを待つ。
ゆっくりと、重そうに動くドア。
廊下の蛍光灯のあかりが千夜子さんを照らし、俺は息をのんだ。
無造作に乱れた髪。
こぼれそうなほど涙をためた瞳。
視線が合ったのはほんの一瞬で、千夜子さんはふぅっと目を細めたかと思うと
俺の胸に寄りかかってきた。
「千夜子さん!?」
いきなり体重を預けられた驚きは、すぐに別の驚きに変わった。
「体、めちゃくちゃ熱いんだけど。熱あるんじゃね!?」
千夜子さんのおでこに手のひらを当ててみた。
少し汗ばんだそこは、はっきりと熱を放っている。
俺は千夜子さんを抱きかかえ、いそいでベッドに寝かせると、氷水で冷やしたタオルをおでこにのせた。
冷たさが心地いいのか、千夜子さんの表情がほんの少しやわらいだ。
「………」
そういえば初めて会った日も、千夜子さんの足首を冷やしてあげたんだっけ。
……ホント、世話の焼ける女。
そう思ったと同時に、胸の奥がうずいた。



