マンションの下に到着し3階を見上げると、カーテンを引いた窓からは一筋の明かりすらもれていなかった。
俺は躊躇し、考える。
部屋が暗いということは、たぶん千夜子さんは仕事に行っていて留守なんだろう。
こういう場合は、普段ならあきらめて帰ることにしている。
でも今日はなぜか、胸にひっかかるものが無視できなかったんだ。
俺はマンションの階段を上り、物音ひとつしない千夜子さんの部屋のインターホンを押した。
ピンポーンという高い音が、ドアの向こうからかすかに聞こえる。
無意識に耳をそばだたせる俺。
「千夜子さーん、いないの?」
ノックしながら尋ねた。
静まり返った廊下で名前を呼び続ける俺は、我ながら滑稽だ。
「千夜子さん。俺だよ、シン」
そのとき、内側から鍵の開く音が響いた。



