ただ事じゃないその叫び声は、ピンクの看板が光るラブホの入口から聞こえていた。
見ると、スケベそうな中年のオッサンに、がっしりと腕をつかまれた若い女の子。
「やだ、やだ、やだーーっ!!!!」
「そんな冷たいこと言わないでよ、ちぃちゃん」
オッサンは今にもホテルの玄関をくぐろうとしている。
一方、“ちぃちゃん”と呼ばれた女の子は、涙と鼻水をダクダク流し、人目もはばからず必死の抵抗。
うーん。
『嫌よ嫌よも好きのうち』
……ってレベルじゃないよな、どう見てもあれは。
いい歳こいた男が何やってんだか。
俺はつかつかと歩み寄ると、オッサンの背後に立った。



