2年前に陸上をやめてから、健吾はどこか投げやりな雰囲気を漂わせていたと思う。
だけど最近は俺から見てもまぶしいくらい、イキイキとしているんだ。
それは紛れもなく、莉子ちゃんの力だ。
彼女との未来を願う気持ちが、健吾に力を与えているのだから。
俺の言葉を聞いてキョトンとする莉子ちゃんに、アキが口を開いた。
「今の健吾にとって、あんたとの未来が“夢”ってことじゃねーの?」
「………」
夢。
そう、夢なんだよな。
たとえば子どものころ、ウルトラマンになりたいとか、宇宙旅行に行きたいとか夢を見た、あの感じとはまるで違う。
少し大人になった俺たちが見る夢は、ひとりで見るものじゃなくて。
自分以外の誰かを強く想うとき、漠然とした未来の中に、浮かびあがってくるもので――
そのとき突然、
頭の中にひとりの人の顔が現われて、俺は驚いた。
な、なんでこのタイミングで、彼女の顔が浮かぶんだよっ……。
脳裏からその顔を追い出そうとしていると、小さな着信音があたりに響いた。



