俺はワンルームのすみに設置された小さなキッチンで、手際よく玉ねぎの皮をむき始める。
料理は、もともと得意だった。
うちは親父も兄貴も料理人だから。
いつも身近に料理があったし、そのせいで逆に、「男が包丁を持つなんてダサイ」と反発したこともあった。
素直に料理が好きだと思うようになったのは、つい最近だ。
その心境の変化が、何を意味するのかは、自分じゃよくわからないけれど。
「わぁ~、いい匂い」
出来上がったハンバーグに顔を近づけ、うっとりとつぶやく千夜子さん。
「シン君ってホント、料理が上手だよね」
「お婿さんにしてくれる?」
「それはやだ」
即答する千夜子さんに、俺は「ちぇーっ」と舌打ちして、ふたりで笑った。
不思議なほどに楽しかった。
仲間と騒いでいる時とは違う
家族と過ごす時とも違う
この部屋で、千夜子さんといるときだけの、俺がいた。



