最近の千夜子さんは、俺とふたりきりでも前みたいに緊張しなくなった。
たぶん、朝まで何も起こらず過ごしたあの夜のおかげで、俺に対する警戒心がとけたんだろう。
それに俺はいつも言ってるからね、
「オトナの女性にしか興味ないもん」って。
そのたびに千夜子さんは
「どうせあたしはコドモですよ」
って拗ねるんだけど。
お決まりのパターンみたいなやり取りが、なぜか俺には楽しくて、癒されるんだ。
「千夜子さん、もうメシ食った?」
「ううん」
「やっぱり。ちゃんと食わなきゃダメじゃん」
千夜子さんは仕事が休みの日になると、平気で3食抜かしてしまう。
ダイエットとかではなく、ひとりで食べるのが味気ないから、らしい。
「そんなことだろうと思って、ほら」
俺は買ってきたスーパーの袋を得意げに見せた。
ガサゴソと中身をチェックする千夜子さん。
「ひき肉、玉ねぎ……あっ、ハンバーグ!?」
無邪気に目を輝かす千夜子さんに、俺の頬が思わずゆるむ。
「すぐに作ってあげるよ」
「ありがとう~!」
こんなに喜んでもらえるなら、料理のしがいがあるってもんだ。