「んー……」
カクン。と彼女の顔がこちらを向いた。
半開きの唇。
長いまつげ。
ふいに至近距離で見た寝顔に、俺の心臓が跳ね上がる。
俺はいそいで千夜子さんをベッドに寝かせ、肩の上まで布団をかけた。
「んんー……」
のんきに寝ぼけた声を出す千夜子さん。
てか、何なんだよ!?
その寝顔も、その声も。
起きてるときはガキなくせに、寝姿は妙に色っぽいとか反則だろ。
それを見てドキドキしてる俺も、おかしいだろ。
「……マジで……変な女」
千夜子さんの寝顔をチラッと横目で見て、俺はため息をもらす。
「でも……いい女だよなぁ」
俺の鼓動より遅い秒針の音が、静かな部屋に響いていた。



