「……マジかよ」
千夜子さんの部屋に戻った俺は、間の抜けた声を出す。
「この状況で寝るか、普通?」
たぶん俺が部屋を出て、ほんの5分ほどしか経っていないはずなのに。
戻ってきたら、千夜子さんはすっかり夢の中だったんだ。
知らず知らずのうちに寝てしまったらしく、テーブルに顔をのせて寝息をたてている彼女。
たしかに俺は「何もしないから安心して」って言ったけど、こんなに無防備なのも、いかがなものか。
うぶなくせに大胆で、よくわかんねぇ女……。
「千夜子さ――」
起こしかけて、俺はとっさにやめた。
よく考えたら仕事の後なんだから、疲れていて当然だよな。
ムリに起こすのはかわいそうだ。
「………」
でも、ベッドで寝なきゃ風邪ひくし。
「……言っとくけど、スケベ心で触るわけじゃねぇからな」
誰に対してかわからない言い訳をして、千夜子さんの体を持ち上げた。
脱力しきった体は、俺の腕の中でぐにゃりと曲がる。



