「や、あのっ……別に変な意味で言ったんじゃねぇからっ」
言い訳がましくごまかしていると、ポケットの中の携帯が鳴った。
グッドタイミング。
電話の相手に感謝しながら、俺は「ちょっと外に行ってくる」と部屋を出た。
「もしもし?」
『あ、シン? 起きてたんだ~』
同じクラスの女の子の声。
急に日常に引き戻された気がして、頭がクラクラする。
「起きてたよ。どした?」
『今からうちに遊びにこない? リカやナオミもいるよ~』
「あー…ごめん」
夜風の冷たさに身震いしながら、俺はとっさに嘘をついた。
「もうベッドの中なんだ」
『え~、シンがいなきゃつまんないよ~』
俺がいなきゃつまんない、か……。
好意的な言葉なのに、なんだか今はあまり嬉しくない。
どうしたんだろ、俺……。
『シン? 聞いてる?』
電話のむこうから返事を急かす声がした。
「あぁ、うん」
『こんどまた遊ぼうね』
「うん……おやすみ」
電話を切った俺は、タバコを一本取り出して、火をつけた。
空気が冷たくて、指先も唇も冷え切っていたけれど
俺はゆっくり、ゆっくりと、タバコを吸った。



