「……まぁ、千夜子さんほどストレートに感情表現する人も、めずらしいと思うけどな」
照れかくしで意地悪な言い方をすると、千夜子さんは
「どうせあたしは子どもっぽいわよ」
と唇をとがらせた。
「ほら、やっぱりストレートだ」
「うるさいなぁ~」
「ははっ」
からかえば拗ねる。
嬉しければ笑う。
あやまるときは泣きそうな顔になる。
俺とは正反対の、自分にまっすぐな彼女。
俺の胸に、温かくてくすぐったいものがこみ上げた。
「千夜子さん、いい女だね」
「え……っ」
と戸惑った彼女を見て、俺は、自分の無意識の発言に気がついた。
“いい女だね”
気づいたとたん、ガラにもなく顔が赤くなる。
他の女の子になら、このくらいのことは軽い気持ちで言えるのに。
心臓がドキドキしている。
逃げだしたいくらい恥ずかしくなる。
それはきっと
言葉と気持ちが、同じ重さだったからだ。



