SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


俺は首を振ったけれど、千夜子さんは何度も「ごめん」と言い続けた。


しだいにそれは、店での出来事に対する「ごめん」に変わっていった。



「……さっきのお客さんね、いつも指名で来てくれる常連さんなんだ。
もともとマネージャーの知り合いの人だし、むげにはできなくて」


「うん」


「だから今日お店で、シンくんのことを問い詰められたとき、“よく知らない子だ”って答えてしまったの……。ごめんなさい」


「ううん。それが千夜子さんの仕事なんだから、しかたないじゃん」


「仕事……」


口の中だけで発音するように、つぶやく千夜子さん。


「……あたしの仕事、か」



違和感をむりやり噛み砕くような表情をしたかと思うと、千夜子さんは深くうつむいて黙ってしまった。



「千~夜子さん!」


俺はさらに彼女の顔をのぞきこむ。



「そんな暗い顔してたら、よけいに暗くなるよ?

笑って、笑って」


ねっ?? とおどけた口調で言うと、千夜子さんは少しだけ微笑んでくれた。


その笑顔は、俺を、単純なくらい嬉しくさせる。