SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


「え…っと、そうだ! 何か飲む?」


千夜子さんが早口で訊いてきた。

一瞬の沈黙すら怖い、といった様子で。



「じゃあコーヒーお願い」


「ホットでいい? 砂糖とかミルクは?
あっ…、ミルク切らしてるんだった……」


「いいよ。ブラック好きだし」


「ちょっ…ちょっと待ってね。牛乳なら冷蔵庫にあるかも!」


「いや、だからブラックで」


「あーっ、ごめん! 牛乳も切らしてた――」


「千夜子さん」



まったくかみ合わない会話を止めるように、俺は冷静な声を出した。


千夜子さんはビクッと体を震わせて

「はいっ」

と小さく返事した。



「……あのさぁ」


俺はため息をつきながら、軽く曲げたひざに手を置いて、彼女の顔をのぞきこむ。



「そんなに緊張しなくても、俺、何もしないから大丈夫だよ」


「……っ」


「始発の時間まで、部屋のすみっこで大人しくしてる。
だからそんなに怖がらないで?」


「ごめん……」