片手で持ち上げられそうなほど軽い体。
頼りなくふわふわした、羽を連想させる軽さだ。
俺は昨日もしたようにお姫様だっこで、3階までの階段を上った。
俺の首のあたりに、千夜子さんの顔がある。
その部分だけやけに熱く感じるのは、彼女から伝わる体温か、それとも俺自身の熱なのか。
「着替えるから、ちょっと待ってて」
ドアの前に着いたとき、千夜子さんはそう言って俺を外で待たせ、先に入って行った。
部屋の中に俺がいたら着替えにくいんだろう。
なんせワンルームだもんな。
……こんな狭い部屋にふたりきりで、朝まで過ごすのか……。
って、何考えてんだ、俺。
始発までの間、いさせてもらうだけじゃねぇか。
「おまたせ」
内側からドアが開いた。
俺はパッと笑顔に戻る。
「おじゃましまーす」
千夜子さんはいかにも部屋着っぽいスウェット姿に変身していた。
飾らないその格好は、まるで見なれた光景のように俺の目になじむ。



