会ったばかりの女の子の部屋に泊まる。
俺とっては珍しくもないことだった。
男女が朝まで一緒にいれば、何をするかは決まっているし、深く考える必要もない。
でも、今日みたいな場合はどうすればいいんだろう?
何するでもなく朝まで千夜子さんとふたりきり。
それはキスやセックスより、ずっと特殊なことに思えた。
寝静まった町。
車の走っていない道路。
千夜子さんの小さな背中を見ながら、言葉もなくマンションへの道を歩く。
「……あれ?」
もうすぐ到着というとき、俺はやっと、彼女の異変に気がついた。
「ち、千夜子さん!」
千夜子さんが歩みを止めてふり返る。
「足……」
彼女の右足を見下ろして、俺は言った。
「引きずってんじゃん。もしかしてまた、痛くなった?」
「……あ、うん。ちょっとだけ」
やっぱり。
てかもっと早く気づけよな、俺のバカ。