「じゃあな、シン」
「はっ!?」
ふり返った時にはすでに遅かった。
そこにあるはずの車が、なかった。
「ちょっと、ハルキさん!!」
走り去る車に向かって俺は叫ぶが、ハルキさんはブレーキを踏む気配もなく。
それどころか窓を全開にして
「シンをよろしくね~、千夜子ちゃん」
そんなセリフを残していった。
「…………」
深夜の道路に取り残された俺。
やられた。
完全に、はめられた。
あ~もう!と頭をかきながら叫ぶと、心配そうな千夜子さんと目が合った。
「………えっと」
かなり気まずい。
「もしかしてあの人、帰っちゃったの?」
千夜子さんが、信じられない、という表情で言った。
「そうみたい、だね」
俺は、しょうがねぇよなぁ、という表情で答えた。