……そもそも、だ。
彼女は謝ってくれたけれど、悪いのは俺の方で。
――『おじさ~ん。俺の彼女に何してんの?』
あんな行為は結果的に、ただの営業妨害で。
――『お前とは恋人でも何でもないって、ちぃちゃんが説明してくれたぞ』
俺よりオッサンを優先するのは、千夜子さんにとって至極当然のことで。
だから。
だから今、彼女の背中が遠ざかっていくのを、俺はガラス越しに見送るしかできないわけで。
もう会う機会がないことも
ただ知り合っただけで終わってしまったことも
全部全部、しかたのないことで。
……なのにどうして
こんなに寂しい想いがこみ上げてるんだよ、俺?
「シン。ジュース買ってきてくれねぇ?」
突然、道端の自販機を指さしてハルキさんが言った。
「今ですか? あとでコンビニ寄ればいいじゃないっすか」
生意気にも俺は断った。
千夜子さんの姿が完全に見えなくなるまで、車を降りたくはなかったんだ。
「喉かわいてんだよ」
千円札を無理やり握らされ、渋々車から降りた。
すでに10メートルほど離れた千夜子さんの方は見ずに、自販機に向かう。
そのときだ。



